【中小企業診断士の独学勉強法】実務補習の疑問いろいろ~実務補習って何?メンバーは?~

診断士実務補習

実務補習について書いてみたいと思います。

実務補習の内容は、筆記試験や口述試験と異なり、現実の企業を分析・アドバイスする作業になりますので、守秘義務の関係からブログ等に記載されることはほとんどありません。とはいえ、実務補習を受ける人は(私もそうでしたが)、実際どんなことをやっているんだろう、服装は?、持ち物は?と不安になることが多いと思いますので、そのあたりを中心に昨年度私が受けた体験談をもとにいろいろと書いてみたいと思います。

第1回の今回は、実務補習とはなにか?どんな人とやるのか?5日間コースがいいのか15日間コースがいいのか?といったあたりについて書きたいと思います。

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実務補習とは

まずは、実務補習とは何なのかについて確認したいと思います。

中小企業診断士の登録要件

中小企業診断士として登録を受けるには、登録の申請の日前3年以内に第2次試験に合格し、次の1のいずれかの実務に15日以上従事すること、または2のいずれかの実務補習を15日以上受けることが規定されている。

1.診断・助言業務
 略

2.実務補習
(1)登録実務補習
機関による実務補習
(2)中小企業基盤整備機構・都道府県等中小企業支援センターにおける実務補習

中小企業診断士実務補習テキスト平成30年度版より引用

上記のうち、1.診断・助言業務を一般的に「実務従事」、2を(そのままですが)「実務補習」と呼んでいます。

「実務従事」「実務補習」の何れかを15日以上実施しないと今後「中小企業診断士」として活動することができません。したがって、「よっしゃこれから診断士として稼ぐぜ!」「中小企業のために役に立ちたい!」と考えている方にとっては必ず通るべき道ということになります。

大半の方は実務補習を受けることになる

「実務従事」は、 知り合いや仕事先の中小企業の企業診断を行い、その証明として所定の申請書(診断助言実績証明書)に診断先からハンコをもらって15日間実務を行うという方法になります。 普段から中小企業と接する機会があるコンサル会社に勤めている方や税理士さん等は、この方法で登録要件を満たすことができます。

しかし、この資格を受けている大半の方は一般事業会社に勤めるサラリーマンが多く「実務従事」に該当する業務を行っていないことが多いので「実務補習」を受けることになります(知り合いの経営者に頼んでハンコをもらうことで(実態がなくても…)、実務従事でいけちゃう場合も多いらしいですが)。ちなみに2.(1)に書かれている登録実務補習機関とは中小企業診断協会のことで、一般的に「実務補習」という場合はこちらを指しており、これから書く内容もこちらが該当します。

実務補習の目的って

では実務補習の目的は何なんでしょう?中小企業診断協会の資料では、以下のように定義されています。

実務補習の目的は「プロとしての中小企業支援を予行演習する」ことです。

受講生の皆様は、これから中小企業診断士として登録されますが、実務経験が少ないままクライアントに「先生」と呼ばれる存在になってしまいます。

そこで、実務経験を積んでいただくために「実務補習」の場があり、以下の3つのゴールが想定されています。

①中小企業診断士として基本となる心構え・あり方を学ぶ
②経営支援に関わる知識の応用・実践を経験する
③経営支援の体験を通じて現場で必要なスキルを学ぶ

中小企業診断士実務補習テキスト平成30年度版より引用

多くの資格試験が筆記(や短時間の面接)で終わる中、中小企業診断士試験は短期間ではあるものの「実務」を課しています。これから独立し「専業」になるのであれ、企業に勤めたまま「副業」するのであれ、企業側からみれば相談相手の中小企業企業診断士は紛れもなくプロです。未経験のまま野に放ち、過ちを犯した場合、資格の価値を落とすだけでなく相手先企業にご迷惑をかけることになるのでこの目的の下実務補習を行うことは、非常に重要だと思います。

実務補習の方法・メンバー

実務補習はOJT

では、実務補習はどうやるのか?ということですが、中小企業診断士試験に二次試験まで合格したメンバー4~7人程度がチーム(実務補習では「班」と呼びます)になって実際の企業に訪問し、企業診断することになります。とはいえ、一定の知識は持っているものの、実務をこなすうえでは未経験のメンバーが数人集まったところで所詮素人集団。それを纏めあげて指導する人物が必要になります。

この人物こそが指導員と呼ばれる先輩診断士になります。

指導員と呼ばれる先生方はどなたも経験豊富な方ばかりになります。というのも、指導員になる条件は、中小企業診断士として独立しており、実務補習生が訪問する相手先企業を紹介できる方になる方だからです(実務補習先は、指導員の顧問先や知り合い先になることがほとんど)。

実務補習生は、期間中は指導員の指示に従うことになります。また、実務補習生が企業を検討・分析するうえで迷路に迷い込んだり、議論が白熱するあまり仲たがいになったりした場合に適切な指示を出すのが指導員の主な役割になります。つまり実務補習は、先輩中小企業診断士が新人中小企業診断士を実務を行いながら育成するOJT(On The Job training)方式を採用しています。

ちなみに、指導員の方の性格は色々(のよう)です。

受講生に自由に議論させてあまり口を出さないタイプ、一から十まで懇切丁寧に指導するタイプ、パワハラ的な怖いタイプ…と色々な方がいます。指導員になるには、副指導員として実務補習の指導員補佐として何回か経験しないとなれないそうなので一定のクオリティは確保しているようですが、人間ですから色々なタイプな方がいるのは仕方のないことです。

指導員は生徒側では選ぶことができませんので、こればかりは運次第ということになります。実際、指導員と反りが合わないとぶー垂れている実務補習生や数時間猛烈に補習生にダメ出しをしている指導員の方を目撃したことがありました(そこに至る経緯がわからないので一概に指導員の方が悪いとはいえないのでこれ以上の言及は控えます)。

実務補習生ってどんな人たち??

どんな人たち?って俺(私)だよ!と突っ込みがきそうですが、書いてみます。前記のとおり、4~7人程度のメンバーが1班として行動することになります。こちらも誰と一緒かというのは選ぶことができませんので運次第ということになります。

居住地で一定の区分け

但し、東京地区に限っていえば、実務補習申込時に記載した住所で一定程度まとまりが作られているようでした。まとまりは、中小企業診断士の地区制(中央・城東・城北・城西・城南)で区切られているようで、私のグループメンバーも概ねそれぞれの地区が管轄するエリアに住んでいる人で構成されていました(とはいえ、実務補習先は隣県でしたが…)。

実務補習生の属性は様々

実務補習生の年代・バックグラウンドは多岐にわたります。下は大学生から上は70代の方まで色々です。私のグループも上下で30歳以上離れていましたし、業種も様々でした。

年代がバラバラのため、しばしば指導員と実務補習生の年齢の逆転現象も起こります。昼ご飯時に他のグループに出くわすと、テーブルの真ん中に座っている年配の方が指導員と思いきや補習生で、隣の20代実務補習生と喧々諤々に議論し、40代の指導員に色々指摘を受けている、なんて光景も見られます。しかもその年配の補習生は上場企業の役員・部長クラスなんてこともあります。

また、弁護士、税理士、公認会計士の方も多いです。彼らは通常は実務従事を選択しますが、お話を伺うとこの世界は素人だから業務内容のイロハや人脈作りのために参加していることも多いとのことでした。

このように実務補習は、サラリーマン生活をしているとなかなか出会うことができない様々なバックグラウンドを持つ方と交流できるというのことも魅力になります。

実務補習をクリアするのに必要な日数

5日間×3回と15日間×1回のどちらを選ぶか?

実務補習は、1企業・5日間ワンセットで計3回実施することが登録に必要な要件になります。計3回は3年以内に行えばよいので時間をかけて登録までもっていくことも可能です。

5日間コースは、2月・7月・8月・9月(8月開催は場所によっては未開催)に開催されます。15日間コースは2・3月に連続で行うことになります。

どの日程であっても、基本は金・土・土・日・月で行いますので、土日が休みのサラリーマンの方は最低でも2日間の有給休暇を取得する必要が出てきます。つまり、15日間コースだと計6日間の有給を1か月半の間に立て続けにとることになります。

この点も含め、5日間コース×3回と15日間コースで迷われる方が多いと思いますので、それぞれどちらを選ぶべきかを以下の項目について検討してみたいと思います。メリデメの感じ方は人それぞれですが、15日間コースを受講した私なりの視点で項目毎に評価してみたいと思います。

  • 登録までの時間の観点
  • 会社の有給取得の観点
  • 指導員・実務補習生の観点
  • 実務補習のノウハウの観点
  • 体力の観点

登録までの時間の観点

これは15日間コースに分があります。

2・3月に15日間をこなしてしまえば4月に登録までもっていけます。しかも、15日間コースの場合は最終日に指導員が登録方法や書類等を一式用意してくれるので、別途自分で登録する手続きが不要になります。

また、4月の新規登録を見越して4月下旬のスプリングフォーラムを皮切りに、中小企業診断士の各種イベントが開かれるので、この時点で登録していると何かと動きやすいです。各種イベントは未登録状態での参加ももちろん可能ですが、先輩中小企業診断士とコネを作ってすぐに活動に繋げたい!といった方は診断士登録をすれば名刺にも書けます(厳密にいうと4月末~5月初旬に登録完了なのですが3月に実務補習を終えて登録を申請した人のほとんどは4月の段階で中小企業診断士と名乗っている方が多かったです。そういった意味からすると「登録申請中」が正しいかも。)。

会社の有給取得の観点

その人の状況としかいいようがないと思いますので、これはとちらが有利とはいえないです。

先ほど書いたとおり、15日間コースをこなすためには最低でも6日間の有給休暇を取得しなければなりません。 日系の会社では3月決算が多いので、決算期に向かって上司がイライラし始めるなんてケースもあると思います。しかも休むのが月曜日・金曜日になり、なにも知らない他の社員からみると、こいつなんで週に3日しかいないんだ??と不審がられることになります。

ちなみに私の場合は、二次筆記試験が終わった後(口述試験前)に、直属の上司に2、3月に集中的に休み必要があるからよろしく!と早めに仁義を切っておきました。人間直前に言われると「くそ忙しいのに、突然なんでそんなこと言いだすんだよ!」と感情的になってしまうことがありますので、それを防ぐ意味でも早めの対処が望ましいと思います(逆効果の場合もありますが)。

5日間コースを選択した場合は、3月末までに1回、4月以降に2回といった形で分散することになります。4月に人事異動を発令する企業は多いと思いますが、直属上司の変更や部署異動等が起きた場合、再度違う上司に交渉し了解を取り付けるということが必要になります。しかも、7・8・9月の実務補習を受けるための中小企業診断協会への申し込みは5月上旬が締め切りになってしまいますので、業務に不慣れ&上司との関係性が十分に構築されないまま、7・8・9月の月曜日・金曜日に(ほぼ)連続で4日間の有給取得をください!と言わなければならず、その時の状況によっては実務補習を受講できない恐れがあります。

私は、この状況をあらかじめ想定し15日間コースを選択しましたが、4月に想定通り?部署異動となりました。それまで経験したことがない業務を担当することになり、5日間コースを選択していなくて本当によかったと胸をなでおろしました。

指導員・実務補習生の観点

長い目で見た場合、15日間コースに分があると思います。

15日間コースは、原則として指導員やメンバーが変わることはありません。原則としてと書いたのは、途中で指導員に体調不良があった場合の緊急での交代(私の班ではないですが、今年ありました…)や15日間コースに5日間コースのメンバーがスポットで参戦する場合があるからです。とはいえ、これらのケースは稀でほぼ固定メンバーと考えてよいと思います。

15日間とはいえ、実務補習日以外もメール等でやり取りすることになるので、実質1か月半ベタでコミュケーションを取り続ける生活になります。従って、最初の1社(5日間コース一回分)は指導員やメンバーがお互いの性格を探り探り進めていきますが、最後の1社の時点ではほとんどのグループは高校や大学時代の親友の如く仲良くなります。

「ほとんど」とあえて書きましたが、まさにこの点が15日間コースのメリットであり、デメリットであると思います。最初の1社目に指導員とどうしても合わないとなった場合やメンバーにやばいやつがいる!となった場合、自らの意思でグループ変更等はできません。

まぁ、高校や大学と異なり、皆いい大人であり、社会人でありながらそれなりの難関資格に挑戦しているので変な人が混じることは少ないですが、最終日でも打ち解けておらず、打ち上げもなしで無言でバラバラに変えるというグループもありましたのでこれは何とも言えないところですね。

5日間×3社の場合は、このあたりのリスクは極小化できますが、1社だけの付き合いでは親友のように話せるメンバー作りまでいくことは難しくなります。特に中小企業診断士は独占業務がなく、診断士同士の繋がりが重要になるので、なんでも相談できる指導員や仲間の存在は非常に大きいと思います。

実務補習ノウハウの観点

これは15日間コースに分があります。

いわゆる経験曲線というやつです。

1社目はメンバー同士の性格も掴めていない&実務補習自体が初体験という状況になりますので、混乱しまくることになります。何を作ればいいの?社長に何を聞けばいいの?議論の進め方は?というようにすべてが謎に包まれた状態で始まります。そのため、与えられた時間内に議論をしてもまとまらず、喫茶店で延長戦、そして資料作りは仕事を終えたあとに夜な夜なやるという生活が待っています。

15日間コースは、先ほど書いたとおり基本的にメンバーは固定になりますので、2社目からは進め方のイメージが暗黙のうちに共有化されスムーズに進められるようになります。診断する3社は業種・業態が異なるケースが多いですが、診断するポイントや流れは意外と共通しています。そのため、1社、2社、3社と進むうちに議論&作業時間が短縮されるだけでなく、クオリティも高くなっていきます。

体力の観点

これは圧倒的に5日間コースに分があります。

15日間コースは前記の経験曲線効果を考慮しても超きついです。

詳しくは次回書きますが、実務補習の5日間1セットは、初日(金)で企業ヒアリング、2日目(土)に打ち合わせを経た後、次の土曜日にはほぼ仕上げておく勢いでないと厳しい日程なので、間に挟まる一週間は個人作業期間となります。個人作業は、2日目(土)の後の日曜日だけでは到底終わらないため、必然的に平日仕事を終えた後、夜中までやることになります。特に慣れない1社目は2時、3時まで平気でやることになります。クオリティを下げれば省力化できなくはないですが、協力していただいた企業様のためにできる限りいい提案をしたいと考えるとどうしても作業時間が長くなってしまいます。

15日間コースはこの生活が約1か月半に渡り続くことになります。しかもインフルエンザの季節。一日でも休んでしまうと実務補習完了と認められないため、体調に気を使いながら過ごすことになります。

個人的なおススメは15日間コース

で、結局5日間×3回コースと15日間コースのどちらがイイの??ということですが、個人的には15日間コースをおススメします。

おススメする一番の理由は指導員や他の補習生メンバーとの関係性を深められる点です。お互いに体力的にキツイところを励ましあいながら提案書を作り、社長さんの喜ぶ顔を見た時のやったぜ!という一体感は何にも代えがたいものがあります。

これは5日間コースでも味わえるのですが、連続で3社やるとPDCAサイクルを短期間でクルクル回すことになるため、1社目より2社目、2社目より3社目とどんどん議論が洗練されていき、提案書のクオリティもあがっていきます。クオリティが上がるということは中小企業診断士としてのスキルも上がることを意味しますので、2次試験の知識が残っているうちに15日間コースで集中的に知識を実務スキルに変換する作業を行っておくことは効率的だと思います。

また、メンバー全員が本気でやればやるほど、互いの意見がぶつかり合い途中ギクシャクすることがありますが、その過程があったほうが最終的なメンバーの絆は深まるような気がします。私のグループも実務補習終了後も1か月か2か月に1回程度は定期的にあって情報交換していますし、現在、指導員との繋がりをきっかけに副業で新たなビジネスを立ち上げる準備もしています。

まとめ

今回は実務補習の基本的な事項について書いてみました。

サラリーマンをしているとどうしても社内の人間関係が主になってしまい、社外の人間との繋がりが薄れてしまいます。その結果、自社の常識が自分の常識と思い込んでしまい、視野が狭くなりがちになります。

実務補習は、高い専門知識を持つ&意識の高い社外の人間と強制的に接触できる機会になります。そういった人間は行動力も高い傾向にありますので、その方々を梃子に人間関係を広げるチャンスにもなります。

かくいう私も今までは自分の会社がつぶれた時にどうしよう…などと情けないことを考えることが多かったのですが、実務補習をきっかけに、社外に積極的に目を向けるようになり、新たなビジネスとして何か面白いことを始められないか考えるようになりました。

このように社外に目を向ける機会が増えた結果、社内で長年の慣習で行われた業務も「これおかしくね?!」と気づく機会も増え、普段の仕事にも良い効果をもたらすようになってきています。

是非貴重な経験として、適当にこなすのではなく、中小企業診断士試験の知識を活かし、診断先の企業のことを考えに考え抜く体験として実務補習を活用できるといいのではないかと思います。

今回はここまでです。次回は実務補習の5日間は具体的に何やるの?といったところを紹介したいと思います。

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