今回は、前回から引き続き、補助金申請で肝となる経営計画の書き方を紹介します。
後半の今回は具体的な事例使用して、項目ごとの記載ポイントについて解説したいと思います。
今回の記事は、正直長いです。しかし、これに沿って書けばどんな事業の経営計画書を書く場合でも、いい感じに仕上がると思いますので是非ご活用ください(自画自賛になりますが有料の補助金セミナーでもここまでは教えてくれないのではと自負しています)。
なお、今回はコロナ特別対応型の申請をしたのでこれを例に記載していますが、通常の小規模事業者補助金を申請する場合も参考にしていただけると思います。両者の違いは、経営計画の必要枚数(5枚⇒20枚)と補助事業計画書(資金調達書や経費明細書)、新型コロナの経営への影響箇所の記載がない点であり、基本的な構成は同じになります。
使用する事例について
解説にあたっては、ポイントの記載だけでは具体的にイメージできないと思いましたので、簡単な事例を用意し、記載の方向性も併せて書いてみました。
また、経営計画書を5ページfullで使う場合の各項目ごとの記載ボリュームの目安も書いたので参考にしてください。
なお、解説で使用する事例は思いつきです。業界特有の許認可や業界ルール等もここでは考慮していません。あくまでイメージアップ目的ということでご勘弁を。
<解説で使用する事例> A保育所は、東京都の都心部で0歳児から3歳児までを対象とした民間の託児所として、平成30年4月から運営開始した。都市部の共働き富裕層をターゲットに、経営者含む3名の保育士とアルバイト保育士2名で運営している。この5名は全員、都内保育園で5~10年間程度の保育士勤務経験を持っており、うち社員3名は富裕層専門のベビーシッターを3~5年経験している。 園児をお預かりする単価は高いものの、保育所で一度に預かる人数を絞ることで、保育士の目が行き届いた安全な保育環境を提供している。 新型コロナウイルス発生までは順調に引受園児数を伸ばしていたが、園児の親が勤務する会社がテレワーク中心となったことで引受園児数が急減し、令和元年12月期と比べて足元の直近3か月の売上は半分以下の状況になっている。 そのため、A保育所の認知度向上とwebサイト上で園児募集を行うことを目的に、約150万円をかけてwebサイト開発を考えている。このサイト構築のために補助金を活用したいと考えている。 |
まずは全体ストーリーを想像する
具体的な記載をする前に、まずは全体のストーリーをイメージすることから始めます。
前回の記事でも書いたように、審査員に好印象を残すためには経営計画書全体が一つのストーリーになっていて記載が一貫していることが重要になります。
<A保育所の全体的なストーリー(一例)>
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項目ごとの記載ポイントについて
全体的なストーリーを想像したところで、具体的に経営計画書を書き進めていきます。
ここからは公募要領の基本構成(ひな型)に沿って、項目毎のポイントを解説していきます。
新型コロナウイルスの影響を乗り越えるために1/6以上投資する類型のチェック
ここはめちゃくちゃ単純です。 3つの中からご自分が補助金を使って行う事業で当てはまるものにチェックをしましょう。
区分に迷ったら、公募要領で確認してください。区分の違いは、以下の記事にも紹介していますので参考にどうぞ。
~A保育所を例とした場合の記載の方向性~ 非対面で営業を行うためのwebサイトを作りますので、以下のようにチェックをつけます。 □A:サプライチェーンの毀損への対応 ページ数イメージ:4行(ここまでで1ページ目4行目まで使用) |
事業概要(自社の概要や市場動向、経営方針等を記載ください)
ここからが本番です。
事業概要では、いつから事業を開始したか?、どんなことを行っているのか?、競合はどこか?、強み・弱みは?、ターゲットは?といった事項を具体的に記載します。
経営学のフレームワークでいうと、3C(自社情報、顧客情報、競合情報)+SWOT(強み、弱み、機会、脅威)を意識すると漏れなく書けると思います。
事業概要はイントロダクションの役割を果たしますが、適当にチャチャっと書いて終わらせてはいけません。この後に書く新型コロナの影響や補助金で取り組む内容の前振り部分になりますので、そこに繋げるための情報を埋め込んでいきます。必然的に記載量も多くなり、経営計画書全体の中でも最も枚数を使う箇所になります。
なお、項番を細分化するために区切り(例えば(1)設立経過、(2)事業スキーム…といったような小項目)をつけるのは自由ですので、ご自分で記載しやすいように構成を考えます。 ここでは私が書いた項目(区切り)例で解説します。
会社の設立経過等を書く
まずは、いつ設立されてどんなメンバーで事業を行っているのかといった基本的な情報を書きます。
どんなメンバーでという箇所は、○○社の●●部門に△年間勤めていた社長とこんな技術や知識をもった社員□名がいるといった、この後に書く「強み」に繋がるような情報を埋め込んでおくと後段の記載への前振りになると思います。
~A保育所を例とした場合の記載の方向性~ まずは、A保育所の本社所在地や設立経過を簡単に記載します。 また、従業員である経営者を含めた社員3名とアルバイト保育士2名で運営していることも記載します。その際、「社員が3名で運営」といったように単純に記載するのではなく、「都内保育園で5~10年間程度の経験と富裕層専門のベビーシッターを3~5年経験した社員3名と…」いったような具体的な記載にします。 ここで前振りしておくことによって、審査員の頭の中で社員は経験豊富な人たちで構成していることが頭の中に刻み込まれることになります。 ページ数イメージ:5~10行程度(ここまでで1ページ目1/3程度まで使用) |
事業内容・事業スキームを書く
次に、具体的な事業内容や事業スキームを書きます。
内容は、どんな事業を、どんな手段で行い、商品の供給はどう行い、販売はどのように行うのかといった基本的なビジネスモデルになります。
ビジネスモデルは、初見の審査員にとっては文章だけではイメージしにくいので、スキーム図+文章で示すと良いです。ちなみに経営計画書に図や表を入れてはいけないなんてルールはありませんので、読む人にとってわかりやすくなるのであれば、紙幅が許す限りどんどん入れていきましょう。
~A保育所を例とした場合の記載の方向性~ A保育所が具体的にどのように顧客(園児)を集客し、どのくらいの単価で引き受けているのかといったビジネスモデルを図示したうえで説明文を記載します。 この後補助金を使ってwebサイトを構築すると営業上良いことが起こるという方向に持っていけるように、現在は口コミやチラシなどの伝統的手法による営業のみで集客を図っていることを強調して書けると、いい感じの前振りができると思います。 ページ数イメージ:図を入れて20~30行程度(ここまでで1ページ目終了) |
市場動向と顧客ニーズを書く
続いて自社を取り巻く環境について書きます。
いわゆるマクロ経済環境といったり、外部環境といったりするやつです。
小規模事業者の場合、外部環境を自力で動かすパワーはないため、受容すべき前提になります。 具体的に書く内容は、自社の取り組む事業の市場規模はどの程度なのか、将来性はどうなのか、日本社会にとって必要な事業なのかといった「客観的に説明できるデータ」+「解説文」になります。
客観的に説明できるデータは、中小企業白書等の公的機関が出している統計データや自社が属する業界を説明するのに一般的に使われるデータが適しています。何れもweb上である程度拾えますので必ず出典を明らかにしたうえで引用しましょう。
なお、あなたが補助金を取得しようと考えるのは、自分の事業は今後も伸びる!と信じているからだと思います。そのことが他人にもわかるように、事業の市場規模が将来的に伸長することを外部環境の視点で客観的に説明することになりますが、そこには顧客ニーズも存在するから市場が伸長すると考えるのが自然です。従って、市場動向と顧客ニーズはセットで記載するとよいと思います。
できれば、ここに日本経済としての課題まで入れ込めると、後段で記載する補助金を使った事業によって市場を拡大し、最終的に日本経済の課題解決にも寄与できるといったストーリーが描けます。ここは、前回記事のポイントとして紹介した後段で「世間良し」の効果を記載するための布石となります。
~A保育所を例とした場合の記載の方向性~ 「日本全体や都市部での保育所が慢性的に不足している」といった定量データを厚生労働省が出している統計データ等を使って、市場規模・顧客ニーズがあることを示します。 次に、「都心部の住宅購買状況」や「共働き世帯の推移」、「東京都心部の世帯収入データ」等から、A保育所がターゲットとする層の需要を示します。この部分は、次の項目で、自社のターゲット市場を明示しますので、それと関連するデータをもってこれるとベストです。 最後に、どこかの民間有名リサーチ会社の子育て世帯のアンケート調査データを探し、顧客ニーズとともに保育所不足が社会問題化しており、日本社会として解決すべき課題であることを示すことができると完璧でしょう。 ページ数イメージ:3~4個のグラフか表とそれぞれ解説分を入れて1ページ前後を使用(ここまでで2ページ目終了) |
競合の状況とターゲットとする市場を書く
ここまで自社の内容と取り巻く外部環境を記載したので、次に同じ市場内に存在する競合他社の状況と自社のターゲット層を明示します。
どんなに良い事業を展開しようと、資本力が大きい競合他社と市場が丸かぶりでは将来は暗いです。国や審査員も将来が暗い事業に補助金を投入しようとは思わないはずです。
従って、競合他社を紹介しつつ、我々はこんな土俵(ターゲット市場)で勝負することで資本力が大きい競合他社と差別化できているんだと記載することが望ましいです。
また、記載する際は、自社と競合他社のポジションが一目でわかるように二軸のグラフ等を使って図示ができるとわかりやすく、審査員の印象は良くなると思います。
~A保育所を例とした場合の記載の方向性~ 競合他社を紹介しつつ、自社の立ち位置をグラフで紹介していきます。 グラフは、自社と同一地域で展開する競合の保育所について、横軸を「園児一人当たりお預かり金額(単価)」、縦軸を「1保育所あたりのお預かり人数」で示すことができるとわかりやすいと思います。軸を用いて図示する際は、競合他社のうち資本力が大きい企業とできるだけポジションが被らないような軸を選択すると良いです。 また、グラフとともに紹介文を書く際は、競合他社の自社の得意とする市場を紹介しつつ、自社のターゲットとする市場との違いを説明できると良いです。 例えば、「競合のZ社は単価は安いもののお預かりする人数が多い。それに対して、当社は単価は高いものの、少ないお預かり人数で手厚い保育環境を提供しており差別化できている状況である」これを踏まえて「当社のターゲットである、安全な保育環境を求める共働きの富裕層世帯には需要がある」といった形で記載するといいのではないでしょうか。 ページ数イメージ:1つの図か表と解説分を入れて1/3ページ前後を使用(ここまでで2ページと1/3使用) |
SWOTで総括する
ここまでで、自社の状況や取り巻く環境、競合の状況とターゲット市場を一通り記載しました。
一通り説明した状態のままだと情報が散らばっていて、見る(審査)側からは分かりづらい状態になっています。そこで一旦情報をまとめます。このとき、SWOTのフレームワークを使うと、自社と競合、外部環境のことを漏れなくまとめることができるのでおススメです。
なお、SWOTとは、自社の強み「Strength」、弱み「Weakness」、売上を伸ばす機会「Opportunity」、自社にとっての脅威「Threat」の頭文字を表したものです。会社の研修等でも勉強したことがある方も多いと思います。
一見簡単そうにみえるので、SWOTを馬鹿にする人もいるですが、色々なフレームワークが出てくる中でも継続してビジネスの世界での定番となっているだけあり、奥が深く、情報をまとめるツールとして優れていますので、是非活用してみてください。
また、審査員になることが多い中小企業診断士は、試験勉強や実務等でSWOT分析を使うことに慣れていますので、経営計画書でもこれが出てくると「こいつわかってるな」と思われることでしょう(たぶん)。
~A保育所を例とした場合の記載の方向性~ これまでの情報をもとに、SWOT分析のフレームワークにあてはめていきます。審査員が見やすいように、テキストボックスで4つ箱を用意して書きます。↓のような感じです。 SWOTでの記載イメージは以下のとおりになるかと思います。 強み(Strength):経験豊富で富裕者層の子供の保育経験がある保育士の存在 弱み(Weakness):知名度が低い。営業が口コミ中心で集客力が弱い 機会(Opportunity):都心部への人口流入。慢性的な保育所不足。共働き世帯増加。 脅威(Threat):資本力の大きい競合の存在。異業種からの参入による競争激化。 ページ数イメージ:1つの図か表と解説分を入れて1/3ページ前後を使用(ここまでで2ページと2/3使用) |
足元の経営課題と当面の経営方針
長い長い事業概要部分もここを書いて終了になります。
ここでは、前記のSWOT分析までで自社の特徴や置かれた状況をまとめているので、この情報を元に今あなたの会社が対応すべき課題を書きます。そして、課題を踏まえた当面の経営の方向性(=経営方針)を示します。
ポイントは、「課題・経営方針」と「補助金で実施する事業」がマッチするように記載することです。例えば、課題が「対面による営業力の強化」なのに、補助金で実施する事業が「webによる営業力向上」ではおかしいですよね。
事業概要で書いてきた情報を集約すると、補助金を使った事業を行うべきですよね、と誰が読んでも素直に思えるように記載するのがコツです。
課題は弱みの裏返し
課題は、問題点の裏返しを書くと良いと思います。ちなみに問題点は、SWOT分析で書いた「弱み」の部分と考えるとよいです。
課題と問題点は非常に混同しやすいですが、両者の違いを把握できると記載がシャープになるので、違いを抑えると良いと思います。余裕があればこちらの記事で両者の違いを解説していますので参考にしてください。
経営方針は戦略を書く
経営方針は、課題を解決するための大方針(≒戦略)を書きます。
大方針(≒戦略)の書き方は「誰に」「何を」「どのように」を意識して書くと良いです。
また、大方針なので、具体的な対応策を書かないようにすることにも注意です。例えば、webサイトを構築することは対応策であり、営業チャネルを確保することが方針といったイメージです。具体例↓で確認してみてください。
~A保育所を例とした場合の記載の方向性~ A保育所の問題点は、弱みとして記載した「集客力の弱さ」「知名度の低さ」ですので、これを裏返しにした「集客力の強化」「知名度向上」あたりが課題になると思います。 課題を踏まえた経営方針は、課題を解決するための方向性になりますので、例えば「【誰に】出勤時にスポット的に保育を頼みたいあるいは保育所不足で預け先を探している共働き富裕層に対して、【何を】当社の経験豊富な保育士のサービスを、【どのように】リアル接点以外の営業チャネルを確保し、集客力を強化し、売上向上に繋げること」といった記載がいいと思います。 この【どのように】の部分の対応策が、この後の補助金を使う事業の具体的な内容になっていきます。 頁数イメージ:1/3ページ前後を使用(ここまでで3ページ目終了) |
新型コロナウイルス感染症による影響(売上減少等の状況記載ください)
ここは前回の記事でも書いたとおり、コロナ特別対応型の場合には審査上大きなポイントになります。
審査員側に対して、新型コロナの影響で事業がどのくらい困っているか、経営がどの程度悪化しているかをわかるように「数字」で記載することがポイントです。
悪化の状況を「かなり」とか「だいぶ」といった文言で記載しても読み手は良くわかりません。できるだけ苦境の状況がわかるように「売上が令和2年12月期の半分になった」であるとか、グラフで売上の状況がわかるように記載するとよいと思います。
また、売上・利益等のP/L(損益計算書)情報だけでなく、現金等の資産のB/S(貸借対照表)情報もあると説得力が増します。
フローとストック両面からみて、新型コロナウイルスによってどの程度打撃を受けたのかアピールします。
しかし、「もう虫の息です」「明日にでもお金を用意できないと潰れます」といったことは書いてはいけません。あくまでも補助金をもらって販路を拡大し、売上を伸ばすことが経営計画書を作る目的であり、寄付を募ることで経営を助けてもらうことが目的ではないからです。そんな会社に補助金を出したくないですよね…
従って、新型コロナウイルスによって多大な影響を受けているけれども、これまでのやり方を変えてあるいは新しいやり方を取り入れれば売上を回復できる、といった程度の経営への影響を記載できるとこのパートは100点だと思います。
なお、小規模事業者補助金は、創業当初あるいは創業前でも補助対象となりますが、その場合は新型コロナウイルスの影響はそれほど受けていないかもしれません。しかし無理やりにでも影響が出ているように見せるため、「本来、創業開始と同時に営業攻勢をかけてスタートダッシュを決める予定だったのができなくなり、うまく事業を軌道に乗せることができなかった」といった記載をすると良いと思います。
~A保育所を例とした場合の記載の方向性~ A保育所は、新型コロナウイルス発生までは順調に引受園児数を伸ばしていたものの、それまでお預かりしていた園児の親がテレワーク中心となったことにより預かる園児が減ってしまい、売上が半分になった状況ですので、まずはそれを素直に数字を示して書きます。 ここまで明確に売上がわかりやすく減少している場合は、新型コロナ発生前と発生後の売上推移をグラフにすると良いでしょう。 また、この後に新規顧客を集客するためのサイト構築について記載しますので、売上とあわせて新規顧客の流入数も示しておくといい感じの伏線が張れると思います。 売上の状況に加えて、B/Sの情報も記載します。特に潰れるか潰れないかという点では、キャッシュの情報、借入金の状況を示し、売上が半分になっても何とか持ちこたえれるといったことを記載できると経営面ではなんとかなるなということを伝えることができると思います。 ページ数イメージ:1/3ページ前後を使用(ここまでで3ページ1/3使用) |
今回の申請計画で取り組む事業名【必須記入】(30 文字以内で記入すと)
この部分は、前回記事のポイントでも記載したとおり、30文字規制は絶対守るように書きましょう。
また、事業名は、『やりたいこと+効果+「事業(固定)」』とすると、事業名だけで、こんなことをやって、こういう効果を狙ったものなんだと分かりますので、このフォーマットを使うのがおススメです。
~A保育所を例とした場合の記載の方向性~ 事業名:園児募集用webサイト構築による集客力拡大事業 (24文字) やりたいこと→園児募集用webサイト構築 効果→集客力拡大 ページ数イメージ:表題等を入れて2行を使用(ここまでで3ページ1/3を使用) |
今回の申請計画で取り組む内容
30文字で書いた事業名を詳しく説明するパートになります。
補助金を使った事業によって、どのような手法で、どのような手順で売上を伸ばしていくのか、利益をあげていくか、を読んだだけでわかるように記載します。
このパートは、ポイント解説だけではわかりづらいと思いましたので、A保育所での具体的な記載例を示しました。
補助金事業で実施する事業の解説をする
まずは、取組みの概要を記載します。
取組みの概要とは、広告の実施であれば「どんな広告をどのような層に向かって打つのか」やテレワークの環境整備であれば「補助金事業によってどのような仕事環境が構築され、それがどのように売上や利益向上に資するのか」といったことを記載します。
売上等の向上に繋げるイメージ図を見せる
概要の次は、その事業を行うと、なぜ売上や利益増加に繋がるのかといったイメージ図を書けると審査員にはわかりやすくなります。
特に意識すべきは「2.事業概要」で記載した現在のスキーム図からどこが変化したのかわかるように記載することです。
違いや手順を解説する
次に、イメージ図で記載した現行スキームとの「違い」を文章で記載していきます。
ポイントは、書き出しに現行スキームとの違いを記載してしまうことです。先に結論を記載することで審査員に現行との違いを印象づけてしまいましょう。また、小規模事業者補助金の目的は販路開拓等への取組みを補助することになりますので、いままでとどのように販路開拓が変わるのかを明確にすすることが重要です。
違いを明確化したうえで、事業を実施することで具体的に売上を計上するまでの手順を①、②、③…というように番号をつけて解説するとわかりやすいと思います。
(A~Cに関する取組)を書く
この部分は、補助金事業が経営計画書の冒頭に記載した「A:サプライチェーンの毀損への対応」「B:非対面型ビジネスモデルへの転換」「C:テレワーク環境の整備」のどれに当てはまるかを再度記載する箇所になります。
個人的にこの部分はなくても良い気がしますが、公式ページの経営計画書の記載例には、具体的な項番として入っていますので書いておいた方が無難かと思います。
記載する際は、単純に「A:サプライチェーンの毀損への対応」に該当しますではなく、「当事業により自社で製品製造ラインを整備することから「A:サプライチェーンの毀損への対応」に該当する」といった記載がよいと思います。
その他補足する事項があれば記載する
上記までをきちんと記載できればこのパートの記載としては十分ですが、取り組む内容によって以下の事項を補足解説できるとより詳しく事業内容について審査員に伝わりますので、紙幅状況を勘案のうえ、記載を検討してみるとよいと思います。
- 補助金事業を使った類似事業を競合他社が行っている場合、他社の事業との違い
- 補助金事業の実施までのスケジュール(webサイト構築等の場合構築期間をガントチャートで示す、広告であれば実施期間を示す 等)
~A保育所を例とした場合の記載の方向性~ イメージ図等も付けて具体的な記載例を示したいと思います。 まずwebサイトでは、具体的にどんなものを作るのかを解説します。例としては↓感じです。 <記載例> 次に、webサイトを構築することにより、今と何が変わったかをわかるようにイメージ図を記載します。センスがなくイマイチの図ですがこんな感じでしょうか。 次にスキーム図に解説文をつけていきます。 <記載例> なお、webサイトへの誘導から顧客の保育申込までの流れは以下のとおりである。 ①区の保育所紹介サイトや各種民間の保育所紹介サイトでのURLの貼り付け、SNS・チラシ等によるwebサイトを周知することで、これまで当保育所を知らない顧客にリーチする。②webサイトを訪れた顧客に、当保育所の特徴・強み等を訴求する。③特徴・強み等について興味を持った顧客ははそのまま申込みを行うようwebページ内で案内(誘導)する。④既存顧客も申込ページでリアルタイムの保育状況を閲覧できるようにし、オンライン受付を可能とする。 最後に(A~Cに関する取組)を記載します。 <記載例> このほか、webサイト構築までのスケジュールも記載するとより具体性が増すと思います。 ページ数イメージ:2/3ページを使用(ここまでで4ページを使用) |
新型コロナウイルス感染症を乗り越えるための取組の中で、本補助金が経営上にもたらす効果
いよいよ最後のパートです。
補助金を使って実施する事業の効果を記載します。
効果記載の視点は、以下の3点です。これらを全部記載できるとベストです。全部は厳しい場合は、上の2つは最低限記載しましょう。
- 定性的な効果
- 定量的な効果
- 世の中にもたらす効果
それぞれ解説していきます。
定性的な効果
知名度向上、ブランド力向上など、売上や利益にすぐに反映されない効果を記載します。また、この経営計画書は、コロナ特別対応型による補助金事業になりますので、感染予防対策についても記載できると良いと思います。
定量的な効果
「A:サプライチェーンの毀損への対応」や「B:非対面型ビジネスモデルへの転換」であれば売上や利益増加効果、「C:テレワーク環境の整備」であれば費用逓減効果を記載できると良いでしょう。記載にあたっては、現在の状態からどの程度売上が伸長するのか、費用が減少するのかを表やグラフで記載できると読み手にはわかりやすいと思います。
なお、売上見込みは将来の姿を描くことになりますが、将来の予測値は誰にもわからないので、ある程度妥当性をもった前提を置くことで、「フムフムそうだね」と審査員に思ってもらえればOKです。
世の中にもたらす効果
ここは外部環境の箇所で伏線を張っておいた「世間良し」の効果を記載する部分になります。
具体的には、「2.事業概要」の外部環境の部分でふれた、日本経済や社会の課題となっている事項を当事業を行うことにより、課題解決の一助となったのかについて記載することになります。
記載のコツは、事業によりほんの少ししか世間に役に立っていないとしても、誇張しすぎじゃないの?という勢いで書くことです。
~A保育所を例とした場合の記載の方向性~ まずは、定性効果です。以下の要素を、文章あるいは箇条書きで記載すると良いと思います。 webサイトにA保育所の特徴や強み等も掲載し、知らない人に存在を知ってもらうことになりますので、知名度向上に役立つことになります。また、富裕層中心に経験豊富な保育士が対応するハイエンド向けの保育所をアピールすることになるのでブランド力向上にも寄与するでしょう。webサイトの機能として、園児が増加した場合を見越した保育士の募集も兼ねていますので、優秀な社員を広く募集をかけるという点も副次的な効果として挙げられると思います。これに加えて、対面による保育申込みを非対面に切替えることで感染リスクを軽減することも書くと完璧です。
次に、定量効果です。ここは以下のイメージで、表を使って書くとよいと思います。 webサイト構築前後での園児募集人数を記載します。比較する場合の前提の違いは↓のようなイメージでしょうか?
webサイト構築後は、あまりに急激に回復すると前提に違和感を覚えますので、webサイトの周知が募集サイトへの掲載やSNS等により徐々に進んでいく前提を置けるとよいと思います。
最後に、世の中にもたらす効果です。ここは、文章での記載が基本になりますが、場合によっては、定性効果と一緒に書いてしまってもよいかもしれません。例えば、記載は以下のイメージになるでしょうか。 「webサイト構築により、都心部で子供の預け先に困っている共働き世帯に対して、保育所の空き状況を周知することができ、利用しやすい状況を作ることが可能となる。これにより、保育所不足の社会課題解決に寄与し、夫婦共働きの若年層夫婦の不安解消にも繋げることができる」といった内容でしょうか。記載は適当ですが、もっと大げさに書いてもいいかもしれません。 ページ数イメージ:1ページを使用(ここまでで5ページきっちり使用する) |
まとめ
記載のイメージはつきましたでしょうか。
経営計画書の作成は、自ら事業を立ち上げ、拡大していきたいと考えていることをきちんと相手に伝わるように可視化する作業になります。
これを書けないということは、ご自分のやりたい事業ではっきりしない部分があるということでしょうし、その状態だと一緒に働く社員にも伝わらないはずです。また、書いてみることによって、新たな事業のアイディアや運営上の課題が見つかることも多いと思います。
今回の経営計画書の作成は、補助金を取得することが目的ですが、こういった自分の事業を再度見つめ直す機会に活用することも良いかと思います。一度作成してしまえば、異なる補助金を取得する時や銀行に融資を申し込むときにも活用できますので、是非一度取り組まれることをおススメします。その際に、この記事がその一助になれば幸いです。
今回はここまでです。最後まで読んでいただきありがとうございました。
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