前回から引き続き小規模事業者補助金<コロナ特別対応型>について書きたいと思います。
今回は、補助金申請で肝となる経営計画の書き方を紹介します。
前後半2回に分けて書きますが、前半は経営計画を書くうえでの全体的なポイント、後半は具体例を挙げて、目次レベルの記載方法について解説したいと思います。
なお、今回はコロナ特別対応型の申請をしたのでこれを例に記載していますが、通常の小規模事業者補助金を申請する場合も参考にしていただけると思います。両者の違いは、経営計画の必要枚数(5枚⇒20枚)と補助事業計画書(資金調達書や経費明細書)、新型コロナの経営への影響箇所の記載がない点であり、基本的な構成は同じになります。
経営計画書を書くうえでの全体的なポイント
全体的に抑えておくべきポイントは以下の5点になります。
- 経営計画書だけで内容がすべてわかるように書く
- ストーリーを意識する
- 公募要領の基本構成(ひな型)を守って書く
- 公募要領で指定の枚数・字数に収めるように書く
- 三方良しを意識して書く
経営計画書だけで内容がすべてわかるように書く
人間自分が知っていることは相手も知っていると思いこむことが多く、ついついやりがちなので要注意!ですので、最初のポイントとして記載します。
補助金の審査は書面審査になります。書面審査のみですので、審査員に直接会って、経営計画書を補足説明する機会もないですし、審査員はあなたの事業の内容は全く知りません。もちろん、あなたやあなたの会社が独自に持つ知的財産・ノウハウなんてものは知る由もありません。
従って、事業の概要から事業の将来性、今困っていることは何で、何のために補助金が欲しいのか、補助金を使った結果どんなものが出来てどんな良いことが起こるのか、をすべて書面上のみで説明しきらなければいけません。
このポイントを確認するよい方法は、事業内容を良く知らない人に読んでもらって内容がわかるかを聞くことです。書いた本人にズバズバものを言ってくれるであろう、身内の方や親友あたりが適任だと思います。
ストーリーを意識して書く
審査員は、短期間で大量の経営計画書を審査することになります。
その場合の一般的な審査の進め方は、一度通しでザッと全体を読んでから、その後気になった箇所を吟味していく方法になるかと思います。だいたい一つの経営計画書あたり2,30分~長くても1時間程度で行うことになるのではないでしょうか?
そんな短時間で、例えば、前半の事業概要では「事業特性としてお客さんと直接接触して営業活動することは多くない」と書いていたのに、後半の補助金を使った事業を展開する理由の箇所では「お客さんと接触する機会を増やさないと営業活動もままならないので、その機会を増やすために○○システムを導入したい」と書いていたりすると、「さっき直接営業する機会は多くないって言ってたよな?!」と審査員の頭には?マークが並ぶことになります。
こうなってしまうと、書面上だけでは矛盾を解消することができず、これ以上中身を吟味するのも面倒なのでアウト…となりかねません。
また、前半と後半で同じことを繰り返し書くといった場合も、審査員からみると同じ事を何回も書いているなとみなされ、あまり印象はよくないと思います。
従って、経営計画書全体で一つのストーリーとなるように書くことを意識しましょう。
ストーリーになっているか確認する方法は、全体を書いた後に通しで何回も読んで確認することです。また、何人かで協力して経営計画書を書くケースでは個別項目をみるとうまく書けていても、全体でみるとバラバラになってしまっていることがありますので、全体を取纏めて編集する人を置くといいと思います。
公募要領の基本構成(ひな型)を守って書く
基本構成(ひな型)とは、小規模持続化補助金<コロナ特別対応型>でいうと、公募要領に示されている以下の項目・構成のことをいいます。
- 新型コロナウイルスの影響を乗り越えるための投資の類型
- 事業概要
- 新型コロナウイルス感染症による影響
- 今回の申請計画で取り組む事業名
- 今回の申請計画で取り組む内容
- 新型コロナウイルス感染症を乗り越えるための取組の中で、本補助金が経営上にもた
らす効果
上記の基本構成(ひな型)に忠実に経営計画書を書いていくことが3点目のポイントになります。
一見当たり前のように感じますが、自分の事業内容を詳しく伝えたいあまり、「自分はこの方が書きやすいから」と勝手に項番を入れ替えたり、「こんな項番なんて守らない方が審査員に伝わるはずだ」と思い込んで自由フォーマットで書いたり、といったことをやりがちです。間違っても、そんな冒険はやめておきましょう。
補助金申請にあたってチャレンジャーになる必要はありません。
公募要領で指定の枚数・字数に収めるように書く
前回の記事でも書きましたが、補助金はお役所仕事です。必要な書類が揃っていない場合や指定された様式どおりに記載されていない時点でアウトになります。
実際に経営計画書を審査するのは役所の人ではなく、委託された民間の専門家になることが一般的だと思いますが、書類が揃っているかという点や指定した内容で書いてあるかといった基本的なチェックは役所で行うことが多いと思います。
コロナ特別対応型の経営計画書でいう、代表的なチェックポイントは以下の2点になります。
- 取り組む事業名の30文字規制
- 経営計画書全体で5頁以内規制
少し解説します。
取り組む事業名の30文字規制
該当箇所は、経営計画書の基本構成(ひな型)でいう「4.今回の申請計画で取り組む事業名【必須記入】(30 文字以内で記入)」の部分です。
ここは最終的に補助金が受理されたら会社名とあわせてweb上に公表される部分になります。なぜ30文字か理由は定かではありませんが、公表時の様式が30文字規制になっているか、文字制限をしないと長々書いてくる人がいて一定制限をかける必要があるか、あたりでしょうか。
何れにしても必ずワードの文字カウント機能を使って、30文字以内で書くようにしましょう。
経営計画書全体で5頁以内規制
これは公募要領に大きな字で書いてある事項ですので、絶対に守らなければならないルールです。
必ず5頁以内です。1行オーバーしてもダメです。コロナ特別対応型では経営計画書のひな型の最後方の欄外にデフォルトで「※」が2行分入っていますが、ここまで含めて5頁以内としておいた方が無難だと思います。
この5頁以内規制は、商工会議所で相談した際も、必ずこれだけは守ってくれ、守らないと審査できないからと言われましたので、超重要事項なのだと思います。
では、5頁以内であれば1頁でもよいのか?
これは、短いからアウトということにはならないものの、通常はどれだけ少なくても4枚、できれば5枚使うように書いた方が無難かと思います。
ちなみに、コロナ特別対応型の公式サイトでは、経営計画の様式記入例が示されており、そこではちょうど2枚に収まるように掲載されています。しかし、この記入例では、私が見る限り内容が薄いと思います。前記のとおり、経営計画書だけで事業内容から新型コロナによる影響、補助金を使って実施する事業とその効果まで初めて読んだ人にわかってもらわなければなりません。そうすると必然的に記載枚数は増えてしまうはずです(むしろ5枚に収めるのがキツイと思います)。
三方良しを意識して書く
最後のポイントです。
ここは応用編ですので、できれば対応することで良いと思います。
まず三方良しとは、
「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の三つの「良し」。売り手と買い手がともに満足し、また社会貢献もできるのがよい商売であるということ。近江商人の心得をいったもの。
コトバンク「デジタル大辞泉」より
昔から言われている格言みたいなものですが、補助金申請では「三方良し」のうち、特に「世間良し」まで経営計画書の記載に入っていると審査に通りやすいと言われています。
「売り手良し」「買い手良し」は事業を行っていくうえで直接関わる人たちなので、彼らに対して良いものを提供するあるいは良い影響を与えるということは事業者として当然の責務になります。
しかし、「世間良し」はそうはいきません。自分の事業が社会にとって地域にとってどのように役に立つかということは小規模事業者にとって壮大な夢みたいなもので、簡単に実現できるものではありません。とはいえ、補助金を出す側の国や地方公共団体の目的は「日本国民に役立つ事業を育て、日本経済を良くすること」になりますので、この点が確認したいポイントになります。
従って、補助金の取得時点では、小規模事業者であるためすぐに日本全や地域社会に良い影響を与えることは難しいですが、こんな大きな目的を果たすためにこの事業を拡大したいんだ!という意気込みを見せることは、審査を通るうえで重要なポイントになることはおさえておくと良いと思います。
まとめ
今回は経営計画書を記載するうえでの全体的なポイントについて解説しました。
どれも当たり前のことに見えますが、実際に書いてみると忘れがちですので、5つのポイントを頭の片隅に置きつつ経営計画書の作成を進めていただければと思います。
今回はここまでです。最後まで読んでいただきありがとうございました。
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